認知度が高まるベトナムのタングステン

投稿: KilalaMay 6, 2022

ガソリンから電気自動車への需要シフトと軍事紛争はタングステンの価格上昇の推進力となっている。
グローバルな産業メーカーは今、ベトナムからのタングステンの調達を模索している。

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ⓒ Saigon Times

タングステンは融点が3422℃と極めて高く、硬度、引っ張り強さ、弾性などの機械的性質にも優れ工業的な価値が高い重要な資源とされる。
耐熱性の高さからヒーターなどに、高い硬度から徹甲弾などの軍事用に、また放射能を遮蔽する能力が高いことからレントゲンなどの医療現場でも使われている。
現在、供給の75%、消費の45%を中国が占めている。

サプライチェーンの確保

中国のゼロコロナ政策によるロックダウンはタングステンのサプライチェーンを混乱させている。

供給不足と低水準の在庫により、原料のAPT(パラタングステン酸アンモン)の欧州での価格は高値で推移している。
価格データを提供するArgus Analyticsによると、純度88.5%のAPTの欧州価格は2021年初頭には39%近く上昇し、12月上旬には325ドル(約4万1400円)/MTU(Metric Ton Unit)となった。
市場にはここ数年、ほとんど新規供給がない。

世界貿易機関の統計によると、米国、欧州、日本はタングステンの約55%を消費しているが生産量は世界全体の供給量の約5%に過ぎない。

米国は毎年最大で40%のタングステンを中国から輸入しなければならないが、中国は米国市場へのタングステン輸出を制限している。さらにウクライナ紛争によりロシアからの調達もできない。

また、米国の「Resources, Conservation & Recycling」誌によると、中国のタングステン埋蔵量の70%は灰重石という低品位鉱で、エネルギー集約型の採掘、汚染、高い操業コストであり、中国の世界的な供給能力を弱体化させる可能性があるとしている。
そのため長期的に供給源の不足を補うために他の潜在的な国の新しい鉱山に投資することが検討される。

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ⓒ Saigon Times
世界有数の総合サプライヤーからの新規供給

米国地質調査所(USGS)のデータによると、ベトナムのタングステン埋蔵量は9万5000トンで、ロシアの40万トン、中国の190万トンに次いで世界第3位を占めている。

Masan High-Tech Materialsは、ヌイファオ鉱山の製品が徐々に世界的に認知され、世界の主要取引先から選ばれるパートナーになりつつある。

生産が正常に戻った今、多くのグローバル産業メーカーがベトナムからのタングステンのサプライチェーンに参加したいと考えるようになった。
また、一部の米国メーカーは同社からの供給により、米国市場の中国産タングステンへの依存度を緩和できるだけでなく、2018年から中国からの製品に課される15%の高い輸入関税を回避できると考えている。

現在、同社ではタングステン、蛍石、ビスマス、銅の4つの製品ラインすべてにおいて最終製品化を進め、鉱物の価値を高めることに注力している。
2020年にはH.C.Starck Tungsten Powdersの買収し、同社の株式の10%に相当する9000万ドル(約117億5000万円)の投資を通じて、三菱マテリアル株式会社と戦略提携を確立した。
これまで、ATI Tungsten Materialsをはじめとする欧米市場において多くの顧客を有し、製品ラインアップについても好評を得ている。
同社のジェネラルディレクターは「当社の強みは、技術革新力、技術への投資、そして高い専門性にあります」と話す。

〈Saigon Times〉
※これらのニュースは各ソースを参考に記事を編集・制作しています。

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