新たな働き方で新たな体験ができるカフェ

投稿: KilalaJun 1, 2022

Unique cafe1_hanoitimes.jpg

手話で話すお客さんとカフェのスタッフ ⓒ HanoiTimes

30人以上の障がい者が働くカフェ「Kymviet」では国内外のお客さまの心を掴むおもてなしがある。

お客さんが来たらすぐにお茶を出し手話で書かれたメニューを見せ、注文の声が聞こえなくてもそれを受け止める。
何も言わずに店員は頭を少し下げ、口に手を当て腕を伸ばしてお客さんへの感謝の気持ちを表現する。
これがこのカフェで6年間行ってきたグエン・トゥエンさん(Nguyen Tuyen)の仕事だ。

Unique cafe2_hanoitimes.jpg

手話の仕方が書かれたメニュー ⓒ HanoiTimes

聴覚障がい者コミュニティで働けることは幸運であり幸せなことです。カフェでの仕事を続けることをいつも楽しみにしています。

このカフェでは飲み物を声で注文する代わりに、メニューに印刷されている手話や絵でスタッフとコミュニケーションをとります。
私はいつもここを第二の故郷だと思っています。そのおかげで、仕事をしながら地域社会とコミュニケーションをとることができました。
自ら手話でコミュニケーションをとろうとするお客さんもいて、そんな時はうれしい気持ちでいっぱいになります。
一番印象に残っているのは、お客さまからおいしいと褒めていただいたことです。他の人と同じように仕事ができると認めてもらえてとてもうれしいですとトゥエンさんは語ってくれた。

Unique cafe4_hanoitimes.jpg

ⓒ HanoiTimes
耳の不自由な人のための共同住宅

「Kymviet」は現在、首都ハノイに3店舗を展開している。

他のカフェと違うのは飲み物だけでなくスタッフとのコミュニケーション体験で、各テーブルにはお客さまがスタッフを呼ぶための点灯するボタンが設置されている。
また、メニューに簡単な手話ほやり方を記し「ありがとう」「こんにちは」などのサインをお客さまがスタッフに伝えやすいように工夫されている。

トゥエンさんをはじめ多くのスタッフは、この場所を職場ではなく「家」と呼んでいる。
トゥエンさんは生まれつき耳が聞こえず、普通の学校には通えず中学を卒業した後、両親の農業を手伝うために学校を辞めた。
6年前、聴覚障がいの友人からの勧めでこのカフェの仕事に応募し、飲み物の準備や接客など思いもよらない仕事を任されるようになった。

トゥエンさんだけでなく店のスタッフの多くが学校を辞めて早くから働き始めている。
店長のグエン・ティ・ディンさん(Nguyen Thi Dinh)は8年以上働いている。
以前、健常者と一緒に働いていたときには、聴覚障がい者の苦労をあまり理解してもらえず力仕事を任されることもあったが今は仕事に満足し幸せだという。

7年間勤務しているハー・ティ・マイ・ホアさん(Ha Thi Mai Hoa)は新型コロナが落ち着いた後、職場に戻ったときにはスタッフ一同とても興奮しました。ここは大きな家族のようなものでみんなが愛と悲しみと喜びを分かち合っています。年をとるまでここで働けたらいいなと思っていますと話す。

Unique cafe3_hanoitimes.jpg

バリスタトレーニングの様子 ⓒ Hanoi Times
言葉以上のもの

常連客のひとりレ・ティ・トゥー・チャンさん(Le Thi Thu Trang)は自宅から遠いが、このカフェの人間性や特別なものに惹かれてよくワークスペースとして利用している。
ここに来てその空間と新鮮な飲み物が好きになりました。スタッフは手話を使うので、最初にコミュニケーションをとるときは少し難しく感じますが、慣れてくると機敏に対応してくれるので気に入ってますと語る。
また、第一印象は風通しがよくて静かな空間だと感じました。
障がい者によって運営されていますが慈善事業のような重い雰囲気はありません。ここのスタッフのお客さんを大切にしようという気持ちが伝わってきます。

Unique cafe5_hanoitimes.jpg

カフェの代表ファム・ヴィエット・ホアイさん ⓒ HanoiTimes

このカフェを運営するKymviet Joint Stock CompanyのCEOファム・ヴィエット・ホアイさん(Pham Viet Hoai/49歳)は自身も障がいを持っている。
7歳の時に事故で半身不随となり車椅子の生活になった彼は、障がい者が仕事や勉強で直面する困難や障がいだけでなく、常に自信を失い自分を哀れんでいることを理解していると話す。
このカフェの最終目標は常に障がい者と健常者のコミュニティがお互いをより理解し合えるような職場環境を作ることです。このカフェのおかげで障がい者に対する人々の見方が変わりましたと話す。

2013年、ホアイさんは障がい者が社会の負担にならないよう社会の認識を変えるために少しでも貢献したいと考えはじめ、2020年以降にはカフェでコーヒーを飲んだりお土産を買ったり、ハノイの郊外ハドン地区にあるヴァンフックシルク村を訪れるツアーを組み合わせたりして多くのお客様を迎えている。
現在、ベトナムには200万人以上の聴覚障がい者がいる。これはコミュニケーションを唯一の障壁とする潜在的な労働力である。しかし支援する手段があれば簡単に取り除くこともできることをこのカフェは証明している。

〈HanoiTimes〉
※これらのニュースは各ソースを参考に記事を編集・制作しています。

その他のニュース

ニュースランキング