ベビーシッターに疲弊する祖父母

投稿: KilalaJul 21, 2022

ⓒ VnExpress

ⓒ VnExpress

2人の孫の世話をするためにハノイに移住して1年近くになるグエン・ティ・リーさん(Nguyen Thi Ly/70歳)は疲労と倦怠感から2度入院した。

ビジネスマンの息子夫婦は帰宅が遅くなることが多いため、「家の手伝いと孫の世話に来てほしい」と頼まれリーさんは移住し、毎日、朝6時に起床し一番下の孫にミルクを与えてから、洗濯、床掃除、昼食作りなどを行っている。午後は孫を寝かしつけ夕食の食材を準備する。午後4時は上の孫を幼稚園に迎えに行き、帰宅して料理と食事、お風呂を済ませると午後9時になっている。

低血圧のリーさんは過労で2度も気を失った。しかし「都会ではシッターを雇うのにお金がかかるから息子を助けなければ」と田舎に帰ろうとしない。

北部バクニン省のレ・トゥイ・ヴァンさん(Le Thuy Van/67歳)は、1人目の孫の子守をしたときに嫁との間に対立が生じたため、2人目の孫の世話を息子から頼まれたときは即座に断ったそうだ。

しかし、息子に電話で「シッターを雇うのは高くつく」と懇願され、しぶしぶ荷物をまとめて引っ越した。
案の定、ヴァンさんと嫁の関係は悪化し、子育てに関することで意見が食い違うことが多くなった。例えば、ヴァンさんは食事中に孫たちがじっとしているようにアニメを見せることが多いが嫁はこれに反対だ。

子どもや赤ちゃんの世話の仕方について今と昔では大きく変化し、そのギャップに疲れ果てている祖父母は少なくない。

ベトナムでは、祖父母が孫を世話することについて具体的な調査や統計はないがその数は決して少なくないとされる。
統計総局が2021年に行ったベトナムの高齢化社会と高齢者に関する調査によると、現在ベトナムには約1140万人の高齢者がおり、そのうち35パーセントはまだ収入を得て働いており、残りは自営業や無給の家族労働者で孫の世話をする人も含まれている。

心理学者のチン・チュン・ホア氏(Trinh Trung Hoa)は、本来ならゆっくり休むべき年齢だが、「子供を助けてあげたい」、「役立たずと思われないために働かなければ」という心理から多くの高齢者が個人的な欲望を捨て、次世代を育てるために時間を割くのだという。

ホーチミン市ホン・ベト心理科学訓練応用センターの心理学者グエン・ティ・タム氏(Nguyen Thi Tam)によると、高齢者は家族の中で発言し、自由に休む時間を持つことが必要だという。
祖父母に孫の世話をさせるのではなく適切なシッターを雇うべきで子どもが親の愛情を利用して子守を頼むのは本当に親不孝なことです。
しかし、多くの子どもたちは定年退職すると祖父母は暇でやることがないと思い込んで、親の優しさに甘えて子育ての責任を転嫁してしまう。これは誤った自分勝手な視点でです。
出産前に若者は健康面や経済面で十分な準備をし親に頼るのではなく、子どものために最善のケアをするべきだ。このような責任を十分に果たしていないカップルは急いで子供を作るべきではないと見解を述べた。

心理学者のホア氏は次のように説明する。
経済的に余裕のない家庭が祖父母の援助を必要とする場合、祖父母の心理状態と健康状態の両方を考慮しなければなりません。
孫の世話は責任ではなく喜びと祖父母の愛情に基づいて行わなければなりません。
祖父母が健康で喜んで孫の世話をするのであれば、特定の時間帯だけを割り当て休息する時間を十分に確保するべきです。
また、祖父母に年金や財産がない場合はシッター料として少額を渡すべきでしょう。
孫の世話でお金を受け取ることに誰もが同意するわけではありませんがそれは正しいことです。

完全に解明されているわけではないが研究者は近年、多くの高齢者が孫のシッターとしての責任を負うことを拒否していることに気づき高齢者の意識の変化を感じている。

家族・ジェンダー研究所(the Institute for Family and Gender Studies)の事務局長が北部ニンビン省の300人以上の高齢者と中部ダナン市の500人を対象に行った「高齢化するベトナム社会における高齢者の役割」調査によると、子どもと同居する高齢者の割合は1993年の80%近くから2017年には28%に減少している。
一方、パートナーと暮らす高齢者の割合は9.5%から50.4%に上昇した。

ベトナム社会科学院傘下の社会学研究所がホーチミン市の幸せな家族の基準について行った2020年の調査結果では、3世代以上の家族で暮らすことに満足している高齢者はわずか54パーセントという驚くべき数字が明らかになった。

高齢者からは、「私は年寄りで孫の世話は絶対にできない。さらに子どもたちは祖父母に子守りを頼もうなどとは考えないほうがいい」、「これまでずっと働いてきたので、定年後は夫とのんびりと自由な時間を過ごしたい」などの意見がある。

〈VnExpress〉
※これらのニュースは各ソースを参考に記事を編集・制作しています。

その他のニュース

ニュースランキング