日本で16年間会社勤めをしているレ・ティ・ミン・グェットさん(Le Thi Minh Nguyet)はベトナム人の後輩や学生だけでなく、日本人の同僚からも「お母さん」と親しみを込めて呼ばれている。
70歳近い彼女はおそらく日本でフルタイムで働いているベトナム人女性の中で最高齢だろう。ベトナム人技能実習生のおばあちゃんたちと同年齢である。
グェットさんが「お母さん」と呼ばれるのは技能実習生を専門に研修・派遣している関東情報産業協同組合で通訳・研修講師として働いているからである。
ある日曜日、彼女は唯一の休日を利用して技能実習生たちを3回目の新型コロナののワクチン接種に連れて行った。
このようなことは彼女の仕事ではないがいつも率先して行っている。
実習生の滞在期間は最長3年であるが、来日後数日でカルチャーショックを受ける実習生が多いことも知っている。
「私は彼らを自分の子どものように思っています。彼らのことを愛しているからこそとても真剣に接しています」と話す。
彼女は恵まれない技能実習生を自分のお金で助けることもあれば、自治体や会社のルールに違反する人を無視したり、妥協したりすることは決してない。
20年以上前から実習生の世話をして長年にわたり、彼らの印象的なエピソードにたくさん出会ってきた。
その中でも、メコンデルタのヴィンロン省出身の若い男性は特に印象的だった。
グェットさんは彼のルームメイトから毎日卵しか食べていないことを聞き、不思議に思いその理由を知りたいと思った。
話を聞いてみると、彼はヴィンロン省の非常に貧しい家庭の出身であることがわかった。
数年後故郷に戻り両親のために家を建てられるよう、日本ではできるだけお金の節約に努めていた。
そんな彼が実習を終えてベトナムに帰る前に別れのあいさつに来た日、貯めたお金で結婚式用の備品をレンタルするビジネスを始めようと思っていることを聞いた。
そんな明るい話を聞く幸せな瞬間が日本で過ごしてきた年月をより一層深いものにしている。
日本との特別な縁
グェットさんは、1972年から77年にかけてハノイ貿易学院ハノイ外国貿易大学(Hanoi Foreign Trade College)で行われた日本語通訳養成講座の第1期生で卒業後は日本企業で働いた経験がある。
娘の留学に同行したのは自分のためでもあったが、心の底では同胞のために何か役に立ちたいと思っていた。
そして、日本に3,535ある組合の中で、ベトナム人技能実習生の数でトップである関東情報産業協同組合に入社した。
この組合は、日本で30年以上にわたってベトナム人技能実習生の募集・監理を行ってきた実績があり、特徴は実習生の90~95%が南部の省・市出身であることだ。
彼女の仕事は多岐にわたり実習生に関することはほとんどすべてで、時には業務範囲外の活動にも関わっている。
病気や事故で実習生が亡くなるという痛ましい事件では親族が難局を乗り切るように頼まれたこともある。
彼女は2度にわたってその責任を負い、亡くなった実習生の家族のために親切心と思いやりをもってこの悲劇を乗り越えようとした。
技能実習生に救いの手を
関東情報産業協同組合の正社員として、栃木県の小さな部屋に16年以上住んでいる。
毎日、自転車に乗って近所に住む実習生を訪ね、これまで世話や指導したベトナム人の若者は1000人を超える。
日本全国には約45万人のベトナム人実習生がおり、北関東には1,600人の実習生がいる。彼女は年間平均400人の実習生と仕事をしている。
「組合が私を必要としてくれるうちはやめません。日本とベトナムの若者の教育に少しでも貢献したい」と69歳の彼女はいう。
同組合の後輩であるレー・チャン・フンさん(Le Tran Hung)はグェットさんについて「彼女は常に正しい方法で問題に取り組もうとします。間違ったことに対しては決して妥協しません。業務以外の世話や手助けによって日越友好に重要な貢献をしてきました」と話す。
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