即席麺はどこにいてもほとんど同じ味だと思っていた。しかし昨年南アフリカに駐在した際、その考えは一変した。現地の食べ物や即席麺を食べるうちにベトナム風味の麺が恋しくなってきたのだ。
そう話す彼女は昨年4月、新型コロナが南アフリカで流行のピークを迎えていた時に移り住むことになった。そのとき、人気ブランドの即席麺ミーチュアカイ(mỳ chua cay/酸っぱ辛い麺)を一箱用意した。
その時は万が一、入国後1週間も検疫を受けなければならなくなった時のためにと考えただけだった。
その箱を見た夫には「クレイジー」だと冗談を言われ結局、その箱をベトナムに置いてきてしまい二人とも後悔した。
即席麺は確かにどこにでもあるが味は様々である。南アフリカの現地の味はベトナムでは定番のトムチュアカイ(tôm chua cay/酸っぱ辛いエビ風味)、ラウナム(lẩu nấm/キノコ鍋風味)、ガーラーチャン(gà lá chanh/鶏肉とライムの葉風味)などの伝統的な味とはかけ離れている。
ベトナム国内であればどこでも簡単に手に入るが、南アフリカでは来る人にあの懐かしい味の即席麺を届けてもらうのを待つしかなかった。
このような思いをしたのは私たちだけではなく、ベトナム製品が輸入されていない場所に住んでいる友人の多くが自国の即席麺の味が恋しいと声をそろえて言う。
彼らはHảo Hảo、Cung Đình、Miliket、Omachiといったメーカーの即席麺を恋しがっている。
1958年に日本で発明された即席麺がベトナムに登場したのは、1960年代から南部で救援物資として持ち込まれた時でかなり早くから親しまれ、当時、国内で瞬く間に「ホットトレンド」となった。そして今ではベトナム人の生活に欠かせない料理のひとつとなっている。
私の幼い頃の記憶では、1980年代前半のベトナムの即席麺は大きなナイロン袋に束で入っていてた。
子供の頃の即席麺は、病気の時や学校で高い点数を取った時のご褒美など特別な時にしか食べられない貴重で珍しい料理だった。
この「ミー・アン・リエン/ Mì ăn liền」は文字通り「即席麺」なのだが、ベトナムのメーカーが日本独自のチキン味ではなく、エビ味を導入し始めたため、「ミー・トム(エビ麺)」とも広く呼ばれるようになった。
その利便性、手頃な価格、人気の高さから、即席麺はベトナムのみならず世界中で安心・安全な食品として親しまれている。
時を経て即席麺は大きく変化し改良されてきた。
当初は中華麺だけだったがベトナムのブン(米麺)、ミエン(春雨)、チャオ(おかゆ)、フォーも開発され、カップ麺も定番となった。
即席麺の食べ過ぎは栄養が偏り健康に害を及ぼすという議論や科学的な調査にもかかわらず、世界中で広く消費され、アジア全般では依然として高い人気を誇っている。
世界中の即席麺・調理食品に関連する企業や組織を束ねる世界即席めん協会(WINA)の最新の推定指数によると、2021年に即席麺の需要が最も高い上位15カ国のうち10カ国がアジアの国々である。
そのうち、ベトナムは年間85億6000万食で、439億9000万食の中国、132億7000万食のインドネシアに次ぐ第3位となっている。
2021年の一人当たりの消費数ではベトナムがトップで、韓国、ネパールと続き、一人当たり年間平均87食、つまり、ベトナム人は平均4日に一食即席麺を食べていることになる。
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