先日、日本で販売されていたマサングループのチリソース「チンスー(CHIN-SU)」1万8千本が、表示ラベルに記載せずに、保存料である安息香酸を添加していたということで回収を命じられました。この件について、ハノイ工科大学付属食品技術研究所に所属し、副教授及び博士であるNguyen Duy Thinh氏が意見を述べました。
安息香酸とは
安息香酸とはカビなどの抗菌・静菌作用がある食品添加物の一種です。
その分子が、酵母やカビの微生物の細胞にまで拡散することで、いくつかの酵素に影響を及ぼして、代謝を制限し、細胞呼吸を阻害することになります。これにより、細菌の繁殖を防ぐ効果が期待されます。
チリソースのほか、発酵乳や酢漬け・砂糖漬けの果物、果汁、低温殺菌野菜、お菓子などの食品にも安息香酸が使用されています。
安息香酸は人の体内に入ると、グリシンと結合し、毒性のないピルビン酸を発生させてから体外に排泄されます。健康への有害作用量は体重1kgあたり0.006g。 安息香酸を食べすぎると、タンパク質を合成するために使用されるグリシンが大量に失われ、身体に悪影響を与えてしまいます。 さらに、安息香酸は呼吸器系や中枢神経系にも作用し、眼への刺激を引き起こす可能性もあります。 しかし、Nguyen Duy Thinh副教授・博士の解説によれば、チリソースをスパイスとしてよほど食べすぎない限り、問題にならないということです。
食品加工への安息香酸の使用は許可されている
安息香酸は、日本とベトナムも参加している国際食品規格委員会(コーデックス委員会)が認めた食品添加物のリストに記載されています。その含有量は決められていて、ベトナムでは、チリソースの1kgあたり最大1gを使用が可能です。「チンスー」のチリソースから検出された安息香酸の量はわずか1kgあたり0.41~0.45gであり、許容基準をはるかに下回るため、噂のような死に至ることがないのは明らかです。
米国、カナダ、オーストラリア、ロシア、チェコ共和国、中国、台湾などのマサン製品の主な輸出先では、安息香酸含有量の規制基準が、ベトナム保健省とコーデックス委員会と同じです。これに対して、日本では、キャビア、マーガリン、ソフトドリンク、醤油など、一部の食品にしか使用が認められず、チリソースへの使用は禁止されています。
「その一方、日本ではチリソースへの使用が許可されている添加物のニシンは、ベトナムとコーデックスの規制基準によると、チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品への使用が認められるのに対して、 チリソースへの使用は禁止されています。 したがって、ニシンが入った日本のチリソースはベトナムに輸入することが許可されないわけです。 こうしたことから、新しい輸出先へ参入する際には、ラベルの表示、もしくは食品添加物規制に関する調査かつ研究を厳密に行う必要があります」と、Nguyen Duy Thinh氏は言います。
健康に影響を及ばさないように、産地不明のチリソースの使用は控えましょう。
kilala.vnベトナムの4つの大都市と地方で調査した結果、都市に暮らす人の8割が毎日の食事に欠かせない調味料としてチリソースを使用していました。2017年は、平均して都会の家庭で2~3本、地方の家庭で2本が使用されていました。