「旅館」という場所を、あなたは知っているだろうか。あなたがもし日本を旅行するなら、「旅館」に泊まるという選択肢がある。そこが単なる宿泊場所ではないことに、きっとあなたは驚くだろう。そこにあるのは温かな木の温もり、疲れを癒す温泉、心のこもった料理、ふかふかの布団。和の心に満たされた空間で、あなたは心も体もすっかりくつろぐことができる。ここでの滞在は、あなたにとって間違いなく素敵な思い出になる。さぁ、旅館に泊まろう。そして「日本」を心ゆくまで体感しよう。
旅館の歴史は古い。日本で初めて、いわゆる西洋式の「Hotel」が開業したのは1868年のことだが、旅館のような宿泊施設は700年を過ぎたころにはすでに存在していたといわれている。最初は旅人に野宿をさせないための慈善事業から始まり、平安時代(794-1192)には貴族たちが泊まる高級宿に、そして江戸時代(1603-1867)には庶民の旅人でにぎわう「Hatago」となり、現在は旅や温泉を楽しむ国内外の人々が宿泊するための場所となっている。古くから日本の歴史とともに歩んできたからこそ、旅館の随所に日本の伝統的な文化が見られるのだ。
ぬくもりの部屋
靴を脱いで足を踏み入れると、そこは「和室」。来た人が十分にリラックスできるように創られた「おもてなしの部屋」だ。畳、障子、座布団、湯のみ…日本らしいインテリアが勢揃い。窓から見える景色は、秋なら紅葉、冬なら雪景色など、まるで一枚の絵画を見ているような心地にさせてくれる。基本の部屋の構図はどの旅館も似ているが、家具や装飾品、露天風呂付きなどで旅館ごとの個性が出る。古くからある家屋で老舗の雰囲気を出す旅館、洗練されたデザインでモダンな雰囲気を出す旅館など、さまざま。それぞれの雰囲気に酔いしれよう。
たたみ
いぐさがほんのり香り、夏涼しく、冬暖かい。四季がある日本ならではの、伝統の敷物。裸足で歩き回りたくなる心地よさ。
布団
敷き布団、掛け布団、枕の三点セットからなる寝具。今でこそベッドが普及したが、昔の日本は床にふとんを敷いて寝るのが一般的だった。
障子
格子状の部分に和紙を貼りつけた扉や窓のこと。扉を閉じたままでも外の光がやわらかく入ってくる。紙なので破れやすいため、丁寧に扱おう。
裸になり大勢で風呂に入る温泉は、日本独特の文化。外国人は躊躇する人も多いが、一度入れば、恥ずかしさなど吹き飛んでしまうほど癒される。屋内に造られた「内風呂」と、屋外に造られた「露天風呂」とがあり、とくに露天風呂は、温泉旅館には欠かせない。自然に囲まれ、外の風をうけながらゆったりと浸かる温泉は最高!日本人は温泉のために旅館に訪れると言っても過言ではない。湯船に入るのはシャワーで体を洗ってから、タオルは湯船につけない、風呂から出て脱衣所に行くときはタオルで軽く体をふいてから、など、温泉に入るときのマナーも忘れずに。
秋の露天風呂では、紅葉が見えるかも。朝に風呂に入る「朝風呂」も、とても気持ちがいい。
本物の日本料理に出会う
温泉から上がりさっぱりしたところで、夕食の時間。多くの旅館では、日本料理の一種である「会席料理」がふるまわれる。色とりどりの料理が盛られた器が目の前にところせましと並び、どれから食べるか迷ってしまう。旅館が海の近くであれば魚介類、山の中であればきのこや山菜といったように、その土地でとれた新鮮な旬の食材を使うことが多い。
旅館は朝食も楽しみのひとつ。炊きたてのごはんにみそ汁、焼き魚といった献立は、典型的な日本の朝食スタイル。朝からこんなにたくさんのおかずを食べるなんて贅沢!食事は朝夕ともに、鍋、ビュッフェ形式など、旅館によってスタイルが違うので、どんな食事が出るのかは、行く前にチェックしておこう。
日本料理は奥が深い…
夕食のお品書きの基本
先付
いちばん初めに食べる、酒の肴の役割の料理。旬の素材や珍味などがふるまわれる。
お造り
魚介類の刺身。日本の新鮮な刺身は、プリプリと弾力があり、絶品。
焼き物
肉や魚介を焼いたもの。小さなコンロが用意され、自分で焼いて焼きたてを食べる場合もある。
椀物
あっさりとした味わいの汁物。料理人の腕が試される、非常に重要な料理とも言われている。
煮物
旬の野菜を中心とした煮物。炊き合わせとも呼ぶ。しっかり味がしみ込んだ日本の煮物は、さめてもおいしい。
揚げ物
野菜や魚介の天ぷら、素揚げなど。天ぷらは天つゆにつけて食べることが多いが、塩で食べるのも通。
酢の物
酢であえた野菜や魚介類など。口の中がさっぱりするので、次の料理もおいしく食べられる。
蒸し物
茶碗蒸しや、アツアツの餡がかかったまんじゅうなどの蒸し料理。熱いうちに食べよう。
食事・止め碗・香の物
ごはん・味噌汁・漬け物ののこと。白米が出ることもあるし、釜めしや炊き込みごはんが出ることも。夕食の締めくくり。
水菓子
果物もしくは羊羹、シャーベットなどの甘味。
※このお品書きは一例です。旅館によって品数が増えたり、洋風の料理が出ることもあります。
浴衣を着て過ごす一日
旅館では、館内は浴衣で移動してOK。寒い時季は「羽織」や「丹前」と呼ばれる温かい上着が用意されている。日本人が夏祭りなどで着る浴衣とは違い、旅館の浴衣は寝まき用の簡易的なものなので、自分が着心地がよい方法で着よう。
浴衣の着方
① 袖に両腕を通す。浴衣の下は基本的には下着のみだが、キャミソールやTシャツを着てもよい
② 右、左の順番で前の部分を重ねる(逆だと、日本では死んだ人の着物の着方になってしまうので注意)
③くるぶしの位置に裾がくるように長さを調節し、帯を巻く。帯は、女性はウエストのあたり、男性は腰骨のあたりで結ぶ
その他の旅館の見どころ
女将・仲居
旅館の経営者または経営者の妻を「女将(Okami)」、旅館で働く従業員の女性を仲居(Nakai)といい、着物姿で出迎えてくれる。「Okami-san」「Nakai-san」と呼びかけよう。
お茶
部屋にある日本茶とお茶菓子はサービス。日本の味をゆっくり味わおう。
装飾品
ところどころにある装飾品にも、旅館のこだわりが見られる。思わず写真に撮りたくなる。
みやげもの屋
旅館のロビー近くにはみやげもの屋があることが多い。地元の名産品や旅館のオリジナル商品を買うことができる。
SENDA MAYU/ kilala.vn
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