持続可能で安全なチリソース

レ・ミン・クオンさん（Le Minh Cuong）のチリソース製造は、持続可能な農業をテーマとしたスタートアッププロジェクトコンテストで一等賞を受賞した。

中部タインホア省出身のクオンさん（30歳）は、2014年にシンガポールで観光学を専攻して大学を卒業した。
その後、ホーチミン市の外資系企業に就職したが、留学中に多くの国に行き、その国々の農産物が非常に美しく、輸出が好調であった記憶が強く残っていた。母国にも多くの農産物があるがPRやデザイン力などの理由から、ほとんど知られていないことを常々残念に感じていた。

その気持ちが募り、2016年に会社を辞め地元に戻り、ナンバンカラスウリ（越名：gấc/ガック）を使ったクリーンフード事業を開始した。
オイルやサプリメントなど地元のナンバンカラスウリの精製品からスタートした。しかし、3年後には技術の低さ、価格の高さ、資本不足のためにやめざるを得なかった。
2018年末に事業を閉じ、20人の労働者が職を失い、彼には50億VNの負債が残った。
これは自身とって高価なレッスンとなったという。

その後、1年かけて市場を研究し、約50回の試作を経てチリソースを作り上げ、事業を再開することができた。
このチリソースは、唐辛子の実の収穫から加工、包装、市場への供給まで、製造工程で最大12工程が必要だという。
安全な原料の供給源を積極的に探し、ベトナムの適正農業規範（VietGAP）の基準に従って生産工程を進めている。

「Spico - ớt Việt, hồn Việt」というブランド名を付け、小売店やインターネットで販売され、顧客から賞賛を受けている。
他のチリソースとの違いは、防腐剤と風味調味料を使用しないことだという。
現在、原料はタインホア省のホアンホア地区とティウホア地区の安全な農産物を扱っている。
また、ボトルはリサイクル可能なものを使用し環境に配慮している。
チリソースは様々な風味のものを作り、チリソースの成功後はケチャップの研究開発も行い販売している。

2020年には、あらゆる種類のソースを約3万本販売し、10億VN（約500万円）以上の収益を上げた。
しかし、生産への再投資や機械の購入、工房の改装などにも充てため利益は10％程度にとどまった。
「完全に無菌で安全になるように常に改善を優先してきました。唐辛子は、低温殺菌された濾過水とともに密閉された瓶の中で発酵させ煮沸して殺菌します。お客さまに安心して使っていただけるように最善を尽くしています」とクオンさんは話す。