レ・ヴァン・リックさん(Le Van Lich)は、2021年に最年少准教授となった。
1988年生まれの彼は現在、ハノイ工科大学傘下の材料科学・工学研究所の講師を務めている。
同校の卒業生であり、同校で修士号を取得後、京都大学で博士号を取得した。
最近の研究テーマは、材料の機械的・物理的特性を研究するためのフェーズフィールドモデルの開発と使用である。
決断のとき
2017年、京都大学の博士課程として3年、博士研究員として1年学んだ彼は、日本で働きながら科学研究を行うには非常に良い条件が揃っていたが、ベトナムに戻ってかつて通っていた学校に戻ることにした。
その理由については多くの人に尋ねられたという。
慣れ親しんだ職場で働き続けると、新しい研究テーマに取り組む際にマンネリ化することを危惧していました。それに自分自身でチャレンジして自立した研究の方向性を見出したい気持ちがありました。
当時、アメリカ、イギリス、ドイツで、彼の研究に関連する分野の博士研究員候補生募集などもあり、選択肢が多かったため指導教官の北村隆行教授に相談した。
教授からは「人は誰でも自分の全精力と能力を注ぎ込める場所を選ぶべきだ。私はアメリカのNASAで働いたこともあるが、帰国したのは日本へより大きな貢献ができると思ったからだ」という話を聞きた。
それがきっかけとなり母校であるハノイ工科大学に講師として戻ることを決意した。
研究の道を模索
帰国までの準備は万全だったが、当時、ハノイ工科大学は自治体方式で運営され始めており、新人講師への支援は少なめだった。
そのため、貯金で生活費をまかなうしかなく、毎月の給料を貯めて研究チームを立ち上げるためにコンピューターを購入した。
しかし、それ以上に苦労したのは自主研究の道筋をつけることだった。
1年をかけていくつかの企業と協力し学校からの支援を受けながら、新しい研究プロジェクトを開始した。
そして位相磁場デジタルシミュレーションに関する具体的な研究の方向性を見いだし、現在もその研究を続けている。
研究の未来
大学間の競争は問題発見や改善に役立つ一方で、研究の局地化や協力の欠如を招くため、関連分野の科学者が協力し合い、より価値のある製品を生み出し、コミュニティの利益に貢献することを望んでいる。
そのためには、研究チームがお互いの能力を理解し、共通の利益を見出すための多くの時間、努力、忍耐が必要となってくる。しかし現在、各分野の専門家の数はまだ少なく、国内の科学の発展には大きな障害となっているという。
研究だけでなく、教育にも力を入れ、特に大学生を研究プロジェクトに参加させている。
私は学生に新しい研究成果を出せとは言いません。ただ、本格的な研究環境で勉強することで、社会人としてのスキルを身につけ、自分の能力をアピールし、将来に備えてほしいと思っていますと語っている。
彼にとって研究者に最も重要なことは、専門分野での研究成果と地域や社会に貢献することであるという。
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