ブッキング・ドットコム(Booking.com)によると、首都ハノイはビール愛好家にとって最高の街であるという。
この調査は、過去12カ月間にビジネスまたはレジャーで旅行したことがあり、今後12カ月間に旅行を予定している成人を対象に行われた。28の国と地域の47,728人から回答を得た結果だ。
ハノイ旧市街のターヒエン(Ta Hien)通りとルーン・ゴック・クエン(Luong Ngoc Quyen)通りの交差点は「ビールハブ」と親しまれ数十件ものバーやレストラン、ビール屋台が並ぶ。ここではビアホイ(Bia hoi)と呼ばれる地元で醸造された新鮮な生ビールをプラスチック製のイスに座り楽しむことができる。ビアホイはアルコール度数がわずか3%と軽く、300mlのグラス1杯が7,000〜10,000VND(約34~48円)だ。そのほかに缶や瓶のビールは25,000〜200,000VND(約120~960円)と幅広い種類のビールがある。
また、チリと塩で焼いた海老、レモングラスで蒸したアサリ、海老チリ塩付けて食べるグリーンマンゴーなど、安価なストリートフードも一緒に楽しめる。
新型コロナウイルス感染症が流行する以前は、夜中の1〜2時まで満席になることも珍しくなく、ハノイ文化のひとつとなっていた。
ベトナムビールの歴史
ベトナムのビールの歴史は19世紀後半、ハノイにフランス人がパンとともにビールを持ち込んだことが始まりとなっている。
1890年、アルフレッド・ホーメル氏がハノイで最初の醸造所を設立し、フランス兵の喉を潤し地元の人々にも販売をしたが、伝統的な焼酎を好んでいた当時のベトナム人にはなかなか浸透しなかった。
その後、35年をかけてホーメル氏のビール醸造所は従業員300人を抱えるまでに成長を遂げ、徐々に中流階級の間で親しまれるようになっていった。その理由としては、強い焼酎に比べてまろやかで飲みやすいだけでなく、当時の国際的なアルコールとしては最も手頃な価格であったことだ。
1957年、ホーメル氏の醸造所は国に帰属しハノイの公式醸造所となった。これが現在のHanoi Beer Alcohol And Beverage Joint Stock Corporation (HABECO)社の基礎となり、1960年に最初のビアホイ(地ビール)を発売し発展していった。
HABECO社のビアホイの特徴は、低温殺菌で保存料を使わず,アルコール度数が2〜4%と低く、香り豊かな味わいである。しかも、かなり手頃な価格だったため、屋台から高級レストランまで広がり一般的な飲み物となっていった。1960年代にはハノイの街を歩けば、「世界で一番安いビール」と書かれた「ビアホイ」や「ビアハノイ」の看板を目にすることができ、店の外には何リットルもの樽が置かれていた。
一方、南部のサイゴン(現ホーチミン市)でのビールの流れは、ハノイとよく似ていた。1875年、フランス人のビクター・ラルー氏がサイゴンに小さなビール工場を開設した。1910年には飲料と製氷工場を併設するまでに拡大し、その後も成長を続けた。ベトナム戦争終結後、ベトナムが再統一されると会社はSouthern Beer and Alcohol Company(現在のSaigon Beer and Beverage Joint Stock Company(SABECO))の管理下に置かれた。
北部が「ビアハノイ」「ビアホイ」で有名なのに対し、南部は「ビアサイゴン」「ビア333」で有名である。「ビア333」は、当初「33エクスポート」と呼ばれ、フランスのレシピとドイツから輸入した原材料を使用していた。この名前は、33cL(330mL)のボトルで販売されていたことに由来する。また、ベトナム戦争時にはアメリカ兵の間で愛飲された。
クラフトビールの台頭
2000年代初頭になると、ホーチミン市内に自社工房で製造したチェコビールを提供するレストランが登場し始めた。その中でも最も有名なのが、ベトナム初のビール醸造パブ「Hoa Vien Brauhaus」である。これは、チェコとベトナムの文化交流の深さを表し、ピルスナービールの本場であるピルゼンの伝統的な醸造技術を応用している。
しかし、最も注目すべき変化は2015年から登場し始めたクラフトビールだ。今では20近くのブランドが存在するまでに成長しサイゴンを中心に展開されている。ベトナムのクラフトビールは、単に西洋の製法を再現したものではない。トロピカルフルーツやスパイスなど、その土地ならではの素材を用いて、その土地の気候や食べ物、習慣に合わせた味を生み出している。
このように長い歴史を持つベトナムのビール文化は、今後もベトナムのアルコールビジネスの成長をけん引するといわれている。
同国は2019年に46億リットル以上のビールを消費し、2018年に比べて10%以上増加した。保健省によると、同国では毎年平均34億USD(約3,720億円)をアルコールに費やしており、国民一人当たりに換算すると300USD(約3万3,000円)になるという。
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